施工事例Case
北欧で経験した豊かな暮らしを
九州・福岡でも、叶えてくれた家。
建物概要
- ご住所:
- 福岡県福岡市
- 竣工年月:
- 2020年12月
- 延床面積:
- 107m2
- ご家族構成:
- ご夫妻、お子様1人、犬1匹
福岡市内でも、海を身近に感じられる住宅街に佇むS邸は、三角屋根の玄関ポーチを中心にしたシンメトリーなフォルム。北欧からやってきたネイビーの扉と、赤いポストがアクセントとなり、住まう家族のチャーミングな人柄を表現してくれているよう。
築30年。リノベーション?それとも建て替え?
S夫妻と、この家を手がけたフーセット(代表の中西さん)との出会いは、実は17,8年も前のこと。結婚して間もないS夫妻は当時、家を建てるつもりでした。
「その時訪ねたのがあるビルダーさんで、サポートに入ってくださったスタッフ様の中のひとりが中西さんでした。家づくりに関するアドバイスはもちろん、一緒に土地を見ていただくなど親身になっていただいたのですが、たまたま状態の良い中古住宅を見つけ、そちらを購入することに。ただし、家のことを通じて距離が縮まった中西さんとのご縁は、その後もずっと続いていました」。
それから数年後、一家は2013年より1年間、ご主人の仕事の関係で北欧・デンマークへ。自宅は管理会社に依頼し、月に一度の換気をお願いしていました。ところが…。「帰国してみると、やっぱり人が日常的に暮らしていない家はどこかジトッとしていて、カビっぽいんです。それでも数年住み続けていたところ、娘にアレルギーの気配が。そこで2019年、これはどうにかしなければ、と頼ったのが、中西さんが立ち上げたフーセットでした」。
その時点で、家は築30年。そもそも間取りが細切れで、夏は暑く、冬は寒いこともネックでした。「デンマークで暮らした家が、ほぼ仕切りがないながら、厳しい冬場でも暖かく、とても快適だったんです。そうなると、北欧の家づくりをコンセプトにしたフーセットさん以外、考えられませんでした」。
実のところ、中古の家をフルリノベーションすることも考えていたというSさん。けれど、断熱のこと、間取りのこと、予算のこと。フーセットに相談するうち、トータルで考えると建て替えがベストという結果に辿り着きました。
建て替え前のS邸。メーカー住宅で状態は良好だったが、断熱性・気密性にはもの足りなさを感じていたそう
大切に集めてきた、北欧家具たちを主役に
奥さまのお気に入りでもあるネイビーの扉を開けると、玄関の奥には印象的な、美しいソファとチェアの風景が。進むとそこは、一部が2階まで吹き抜けたLDK。図面上での数値よりもずっと広く感じられる空間です。そして先ほどのソファやチェアに加え、ダイニングにも、シンプルで洗練された北欧のテーブルセットが置かれています。
玄関から入り、正面に見える風景。ランプの下にはアートが飾られる予定
LDKは天井の一部を、思い切って吹き抜けに
「以前はモダンなデザインのものが好みだったのですが、デンマークで暮らす中で、現地の方々に愛されている普遍的なデザインの家具たちにすっかり魅せれてしまって」と、ご主人。今回、フーセットとの家づくりの中でも、「家具が活きる空間」はテーマのひとつとなったそう。
光を優しく反射させる塗りの壁と、「まっさら」という表現が似合うオークの床に、北欧家具の美しいデザインが際立って
またLDKで目を引いたのが、壁一面の書棚とデスクが置かれた“書斎”。「家で仕事をすることが多いので、書斎が欲しいとリクエストしました。ただし以前から妻や娘より「書斎に入ったら出てこない」と言われていまして(笑)、オープンな場所に。配置に関してはフーセットさんにアイデアをいただきました。これが非常に落ち着くし、集中できるんですよ」。
書斎の書棚やデスクは、知り合いである北九州市の工房にオーダー
一方、奥さまのお気に入りはキッチンで、こちらもオープン。2,3人が同時に作業できるほど、ゆったりとスペースが確保されています。「人を招くことが多い家なのですが、新しいキッチンでは、私たちも準備をしながら、ダイニングのゲストとコミュニケーションが取れて嬉しいです」。
キッチンとリビングの間には、間仕切り代わりのチェストを。書斎家具の製作を依頼した工房に、システムキッチンと合わせてオーダーしたもので、リビング側にはお気に入りのカップやソーサーをディスプレイし、キッチン側には普段使いの食器が収納できるようになっています。
書斎家具と同様、オーダーしたシステムキッチンとチェスト
開放感と暖かさが同時に叶う空間がここに
先に紹介したように、細かな区切りがないS邸。1階はもちろん、主寝室や子供部屋、フリールームのある2階も同様で、だからこそ、高断熱の家の素晴らしさを感じるとSさんは言います。
「家の中、どこにいても温度があまり変わりません。エアコンも設置しているのですが、冬場でもそれらを使うことなく、実はストーブ1台で賄えていて。以前の家で、『寒い寒い』と言っていたのが嘘のよう(笑)」(Sさん)。「一年を通して冷暖房を使う機会はグッと減り、オール電化になったにも関わらず、電気代が以前より抑えられていることにも驚いています」(奥さま)。
建物の断熱性を上げることで、空調機器に頼らない「パッシブハウス(無暖房住宅)」。フーセットがつくる家はだからこそ、開放感と暖かさを同時に叶えることができています。
高断熱高気密だからこそ、大胆な吹き抜けがあっても暖か
そんな快適な家ですくすくと育っている夫妻の愛娘・Y ちゃんは中学生。最近は、窓からの眺めが良い部屋で、勉強したり、趣味を楽しんだりすることが増えてきたそう。「それでも、“気配”が感じられるのもこの家の魅力。みんなそれぞれが、好きなことをしていても、どこか一体感があるんです」(Sさん)。
扉のないフリースペースが、今はYちゃんのお気に入り
「この家で暮らし始めて3年になりますが、日ごとにその魅力を感じています」と、奥さま。「人生、ゆっくり楽しもう」と、考え方にも変化が生まれ、新しく始めたことがあるのだとか。
「フーセットの皆さんが、とても楽しそうにお仕事をされている様子を間近で見ながら刺激を受けて、私もインテリアコーディネートの勉強を始めたところです。まだまだですけど、すごく楽しい。家づくりだけでなく、豊かな人生の楽しみ方まで、教えてもらった気がします」。
夜、明かりが灯した姿もS邸の魅力のひとつ
取材・文/鹿田吏子
写真/Katsumi Hirabayashi